Letter

物理:電荷密度波の光による抑制でみられる協同的な原子運動のスナップショット

Nature 468, 7325 doi: 10.1038/nature09539

高温超伝導、巨大磁気抵抗、フェリ磁性や強磁性などの巨視的な量子現象は、ナノスケールでの電子、フォノンおよびスピン間の異なる相互作用間の微妙な均衡によって生じる。そのため、これらの系を解明し特性を最適化するには、強く結合した電子–格子系におけるこのようなさまざまな自由度間の相互作用の研究が重要である。電荷密度波(CDW)材料は、電子密度が固有に変調し、それに伴って格子が周期的に歪むため、このような高度に協同的な現象を研究するための理想的なモデル系である。フェムト秒時間分解手法を使えば、エネルギー緩和経路の軌跡と異なる部分系間の結合強度を保ちつつ、電子分布を急激に擾乱することにより、このような相互作用を直接観察できる。CDWを使って多数の時間分解実験が行われ、電子部分系の動力学的性質が調べられている。しかし、周期的な格子歪みの動力学は間接的に推測するしかなかった。本研究では、フェムト秒電子回折を使って準二次元CDW系1T–TaS2を調べ、構造動力学的性質に関する直接の原子レベル情報を得た。実質的には、電子空間分布の光による変化から生じる原子運動が直接観察された。振幅が約0.1 Åの周期的な格子歪みは、対応する集団モード周期のほぼ半分に相当する時間スケール(約250フェムト秒)で約20%抑制された。高度に協同的で、電子に駆動されたこのような原子運動には、急速な電子–フォノンエネルギー移行(約350フェムト秒)が伴い、その後にCDWは急速(約4ピコ秒)に回復する。観測した構造動力学的性質の協同性の程度は著しく高く、強相関系の物理的性質を制御する過程の原子レベルでの俯瞰図を得ることの重要性をはっきりと示している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度