Letter 物理:捕えられた反水素 2010年12月2日 Nature 468, 7324 doi: 10.1038/nature09610 反物質は、1931年にディラックによって初めて予言された。高エネルギー反粒子による実験は今やありふれた手法であり、また反電子は、陽電子放出断層撮影という医療技術で日常的に利用されている。反水素は反陽子と陽電子の束縛状態であり、2002年からCERN(欧州合同原子核研究所)において低エネルギーで生成されている。反水素の利用で関心がもたれているのは、自然の基本対称性の高精度な検証である。電荷共役変換/空間反転/時間反転(CPT)定理は、素粒子の相互作用に関する標準模型の基礎の不可欠な一部分であり、水素と反水素が同じスペクトルになることが要求される。水素原子に関する最新の実験精度が1sから2sへの遷移周波数では約1014分の2に達していることから、反水素原子の厳密な分光を行えば、議論の余地なく、理論モデルに依存しないCPTの検証が行えるであろう。また、反水素は反物質の重力に対する挙動を調べるのにも使える。しかし、これまでの実験で生成された反水素は閉じ込められておらず、その構造の詳細な研究は不可能であった。本論文では、反水素原子の捕捉を実証する。約107個の反陽子と7×108個の陽電子を相互作用させ、我々の磁気トラップに反水素を捕捉した後、適宜解放することで38個の消滅事象を観測した。バックグラウンドは1.4±1.4個であった。この結果は反原子の高精度測定への扉を開くものであり、水素で開発されたのと同じ手法をまもなく反原子に適用できるようになる。 Full Text PDF 目次へ戻る