造血幹細胞(HSC)は、生体エネルギー要求量が著しく異なる増殖状態の間を行き来できる。HSCは成体では休止状態にあることが多いが、生理的な要求に応えて増殖状態に入る。栄養の入手可能性や増殖状態にHSCの生体エネルギー収支を釣り合わせることは、造血系の活発な活動に不可欠だが、この問題はほとんど解明されていない。本論文では、腫瘍抑制因子Lkb1が造血細胞におけるエネルギー恒常性維持に極めて重要であることを示す。成体マウスでのLkb1不活性化によって、HSCの休止状態がみられなくなり、それに続いてすべての造血細胞亜集団の急速な枯渇が起こる。Lkb1欠損骨髄細胞では、ミトコンドリアの異常、脂肪代謝およびヌクレオチド代謝の変化や細胞内ATPの枯渇が引き起こされる。造血細胞へのこうした影響は、AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)およびmTOR(mammalian target of rapamycin)シグナル伝達のLkb1による調節とはほぼ無関係である。これらのデータが明確に示しているのは、HSCの細胞周期への進入制限や、造血幹細胞のエネルギー恒常性の新規の代謝チェックポイントを介した広範な維持に、Lkb1が中心的な役割を果たしていることである。