Letter がん:肺がんの進行中のp53回復に対する段階特異的感受性 2010年11月25日 Nature 468, 7323 doi: 10.1038/nature09535 腫瘍形成は多段階的な過程で、重要ながん遺伝子やがん抑制性遺伝子経路で経時的に変異が蓄積することにより起こる。こうした発がん性遺伝子異常を標的とした個別化がん治療は、がん抑制遺伝子の持続的な不活性化、あるいはがん遺伝子の活性化が進行がんには必須であるという前提に立っている。p53がん抑制経路の変異はヒトがんでは一般的で、欠陥のあるp53経路の薬剤による再活性化の研究に多大な努力が注がれている。本研究では、マウスの定着した肺腫瘍でp53の機能を回復させると、悪性肺腺がんに特異的に、顕著だが不完全な腫瘍細胞喪失がみられるが、肺腺腫ではこれは起こらないことを示す。また、MAPKシグナル伝達は、悪性化への極めて重要な決定因子であり、かつArfがん抑制遺伝子発現の刺激因子でもあることを明らかにする。このような状況ではp53機能回復に対する応答は、Arfの発現に強く依存している。p53はがんの進行につながる変異の獲得を抑制して悪性化を制限するだけではなく、p53はその回復に際し、がん遺伝子シグナル伝達の増大に反応してがんの退縮を引き起こすように働くと、我々は提唱する。今回の観察結果はまた、初期段階の肺腫瘍発生には十分な程度の低レベルのがん遺伝子活性では、p53経路は働かないことも強調している。これらのデータは、がんの発生ではなく進行に重要な経路を修復すると、がん細胞集団のステージが不均一であるためにがん退縮が不完全なものになる可能性があることを示唆している。 Full Text PDF 目次へ戻る