Article 生態:海洋表層のプランクトン性原核生物にみられるゲノムおよび機能の適応 2010年11月4日 Nature 468, 7320 doi: 10.1038/nature09530 海洋微生物の生態および代謝の解明は、塩基配列の解読された参照用ゲノムが不足していることが障害となっている。この問題のために、我々は、世界の各海域で収集された137の多様な海洋微生物単離株の塩基配列を解読した。これらの塩基配列を、これまでに公表されている海洋原核生物のゲノムと共に、海洋メタゲノムデータと照らし合わせて解析し、海洋表層の原核生物性ピコプランクトン(大きさ0.1〜3.0 µm)の生態に関する手がかりが得られた。そして、塩基配列解読済みのゲノム群から、2つの微生物グループの存在が示唆された。第一は、ピコプランクトン群集内にほぼ常時大量に存在する数個の分類群のみからなるグループ、第二は、大量に存在することがほとんどない多くの微生物分類群からなるグループである。第二のゲノムの内容から、これらの微生物がエネルギーの限られた環境では低速で増殖して生存することができ、エネルギーの豊富な環境では高速で増殖できることを示唆している。対照的に、大量に存在しかつ汎存性であることがゲノム解読から明らかになったピコプランクトン性原核生物は、ゲノムがより小さく、おそらく低速でしか増殖できないと考えられ、エネルギーの豊富な条件を感知、もしくはそれに速やかに順化する能力が相対的に低いらしい。これらのゲノムの特徴から、細菌を餌とする生物やウイルスによる捕食の回避に使われる方法の1つは、低速の増殖と低バイオマスの維持であるという考え方もできるだろう。 Full Text PDF 目次へ戻る