Letter 地球:最終氷期極大期の間に生じた大西洋深層水の逆向きの流れ 2010年11月4日 Nature 468, 7320 doi: 10.1038/nature09508 大西洋の南北方向の鉛直循環(meridional overturning circulation;MOC)は気候システムの最も重要な要素の1つと考えられている。これは、メキシコ湾流などの温度の高い表層流が熱帯から高緯度域へ大量のエネルギーを再分配し、局所的な気象と気候パターンに影響を及ぼす一方で、下層の分流は深海を換気し大気から遠く離れた深海の炭素貯蔵に影響を及ぼすからである。その将来の気候に対する重要性にもかかわらず、現在とは対照的な過去の気候におけるMOCの働きについては異論が多い。栄養素に基づく代理指標と最近のモデルシミュレーションは、最終氷期極大期に北大西洋の対流活動が現在よりもかなり弱かったことを示している。対照的に、速度に敏感な231Pa/230Th放射性同位体比の北大西洋で得られたデータは、MOC強度の変化はごく小さかったことを示していると解釈されている。本論文では、大西洋の海盆規模での深海循環は最終氷期極大期にはおそらく逆転しており、南洋からの北向きの水の流れが支配的であったことを示す。この結論は、南大西洋で得られた新しい高分解能データに基づいており、このデータによって231Pa/230Thの海盆規模での南北方向の勾配が立証され、それによって深層海流の方向が確定された。この発見は栄養素に基づく代理指標と一致しており、空間勾配を注意深く考慮すれば、北大西洋海盆外部でのさらなる231Pa/230Thの分析によって、過去の海洋循環の解明が進むであろうことを示している。この広域的な見方から、北大西洋に起源をもつ明瞭な南向きの深層流を伴う現在の大西洋のMOCパターンは、完新世になって初めて現れたことが示唆される。 Full Text PDF 目次へ戻る