Letter 地球:海洋リン貯蔵庫の進化 2010年10月28日 Nature 467, 7319 doi: 10.1038/nature09485 リンは、生物にとって制限要素となる栄養素で、有機物の埋没と海洋–大気系の酸化還元状態の調節に大きく関与している。海水の溶存シリカ濃度を見積もることが可能ならば、鉄酸化物に富んだ堆積岩中の鉄に対するリンの割合を、溶存リン酸塩濃度の追跡に用いることができる。本論文では、熱水周辺の遠位堆積物と鉄鉱層から得られた鉄とリンの濃度比の時間変化を提示し、海洋リン酸塩貯蔵庫の進化を調べる。データは、地球史の過去542 Myrに当たる顕生代を通して、リン酸塩濃度が比較的一定に保たれていたことを示している。対照的に、先カンブリア時代の海洋ではリン酸塩濃度はより高かったようである。特に、約750〜635 Myr前と年代が決定されている新原生代の鉄鉱層から得られた鉄対リンの比にはピークがあり、低緯度域に広がった「スノーボールアース」氷河期の影響を受けている時期は溶存リン酸塩濃度が異例に高かったことを示唆している。氷河期後にリン酸塩流入量が増えたことによって、一次生産速度と有機炭素埋没速度が増大し、海洋と大気がより酸化的な条件へと変化した。スノーボールアース氷河期と新原生代に起こった酸化は共に、後生動物の進化と放散の引き金となったと考えられている。これら2つの要因は密接に関連しており、氷河がもたらした過剰な栄養素は大気中の酸素を増加させ、後生動物の繁栄への道を開いたと我々は提唱する。 Full Text PDF 目次へ戻る