Letter がん:転移性膵臓がんにおけるゲノム不安定性のパターンおよび動態 2010年10月28日 Nature 467, 7319 doi: 10.1038/nature09460 膵臓がんは悪性度の高い腫瘍で、その5年死亡率は97〜98 %であり、通常その原因は広範な転移である。これまでの研究から、この疾患にはゲノムの複雑な状況がかかわっており、コピー数変化や点突然変異が高頻度にみられるが、ゲノム再編成の詳細は明らかにされていない。転移の臨床的重要性にもかかわらず、転移腫瘍間の系統発生的関係、転移巣および原発巣で進行している平行進化の程度、腫瘍の播種機序などといった、転移性腫瘍のクローン構造に関する基礎的な疑問はいまだに解明されていない。今回我々は、最新のDNAシーケンシング技術を用い、膵臓がん患者13例のゲノム再編成の注釈付けを行って、転移巣間のクローン関係について検討した。その結果、膵臓がんではテロメア機能不全、並びに細胞周期の制御異常、すなわちG2–Mチェックポイントは正常であるが、G1からS期へ移行する際の調節不全を示す再編成が起こっていることがわかった。これらはがん遺伝子の増幅を開始させ、がんの後期というより主として初期に起こる。ゲノム不安定性はがんの播種後も持続することが多いため、異なる転移巣において平行進化、さらには収斂進化さえも進行する。我々は、転移を開始させる細胞間には遺伝的不均一性がみられること、播種性転移には原発巣に必要とされるもの以外のドライバー変異も必要であること、そして転移腫瘍間全体の系統樹は臓器特異的な枝をもつことを示す証拠を見いだした。今回の結果は、がんの遺伝的変動の多様性は、ゲノム不安定性と進化的選択とが連携した結果生じることを証明している。 Full Text PDF 目次へ戻る