類人猿霊長類の初期進化史の再構築は、類人猿の起源の年代と生物地理学のどちらについても統一見解が得られていないために困難である。類人猿の起源を太古(白亜紀)のアフリカに求める説やゴンドワナ大陸に求める説がある一方で、類人猿の起源はそれよりも新しい年代(新生代前期)のアジアであり、その後1つまたは複数の初期類人猿分類群がアフリカに分散したとする説もある。これまで報告された中で確実にアフリカ類人猿とされる最古の化石は、アルジェリアの始新世中期末のビルエルアテール(Bir El Ater)遺跡、およびエジプト北部ファユム地方の始新世後期のBQ-2遺跡から出土したパラピテクス科Biretia属の3種である。今回我々は、リビア中部のドゥルアッタラー(Dur At-Talah)断崖の始新世中期末層から、知られているかぎりで最古の多様なアフリカ類人猿化石群を発見した。このドゥルアッタラーの霊長類化石群には、より高位の3つの類人猿分岐群(アフリカメガネザル科[Afrotarsiidae]、パラピテクス科、オリゴピテクス科)と関係する複数の小型種と共に、初期の曲鼻猿類Karanisia属の小型種が含まれる。ドゥルアッタラーの類人猿化石にみられる分類学的に高度な多様性は、アフリカの類人猿の進化が化石記録で現在明らかになっているよりもずっと長期にわたっていたか、さもなければ始新世中期のある時点で複数の類人猿分岐群がほぼ同時にアフリカに定着したことを示している。