Letter 生態:気候に引き起こされた生息分布域の移動にみられる個体群動態的な補償と転換点 2010年10月21日 Nature 467, 7318 doi: 10.1038/nature09439 地球の気候が温暖化するにつれて、生物は種の存続のために、地理的分布域を極地方向または高高度へ移動させると予想されている。しかし、過去に多くの種の分布域が移動してはいるものの、移動していない種や、高緯度側または高高度側の分布境界線だけを移動させて分布域が縮小ではなく拡大した種も多い。気候温暖化に対するこれらの特異な応答と、気候変動に対する種の脆弱性に関してこうした応答がもつさまざまな意味を考えると、一部の種が分布境界線、特に低緯度側または低高度側の分布境界線を移動させていない理由、また、温暖化がこのまま続いた場合にそうした弾力性が持続するのかどうかを解明することは極めて重要な課題である。今回我々は、北米ツンドラ植物2種の南方個体群では、個体群動態にかかわる各種の値の補償的な変化が、気候温暖化の負の作用をやわらげて、分布域の北方への移動を遅延させていること、しかし、このような緩衝作用が無限に続く可能性は低いことを示す。この両種とも、南方個体群は生存率および加入率が低かったが、おそらく生育期が長く高温であるため個々の植物体の成長速度は速かった。これらを含む補償的な変化のため、南方個体群の個体群成長率は現時点では北方個体群を下回ってはいない。しかし、中程度に温暖な年に改善された個体群動態上の各種の値の大半は、最も温暖化した年には低下しているため、温暖化の進行は有害になると考えられ、将来的には個体群の縮小が促進される可能性がある。今回の結果は、個体群動態的な補償を検出し、気候的な転換点を越えたときに分布域の急激な移動につながりかねない非線形的な応答を見つけ出すために、個体群にみられるすべての過程を長期的かつ広範囲に測定することの必要性を強く示している。 Full Text PDF 目次へ戻る