Letter 細胞:表層張力の異方性から明らかになる極性を生む表層流の物理基盤 2010年9月30日 Nature 467, 7315 doi: 10.1038/nature09376 多細胞生物の発生には非対称細胞分裂が不可欠である。それを進行させるには、初めは対称だった細胞に極性が生じる必要がある。線虫Caenorhabditis elegansの受精卵では、前後方向の極性の発生を促すのはアクトミオシンの大規模な表層流で、これが最初の有糸分裂を非対称にする。表層流は発生のさまざまな局面でみられるが、その原動力や物理的原理はほとんど解明されていない。アクトミオシンの収縮力と表層張力がどのように関係し合って大規模な表層流を生み出すのかは、はっきりわかっていない。今回、極性が生じる過程にある線虫受精卵における表層張力の細胞内分布を、位置と方向を感知できるレーザーアブレーション法によって調べたので報告する。これまで出されている説とは矛盾するが、表層流は表層張力の異方性に関連して生じ、表層張力の勾配が原動力ではないことを我々は示す。これらの実験結果を表層の力学的特性の理論的説明と総合することにより、大規模表層流に必要な2つの条件が明らかになる。1つは、表層流の原動力となるアクトミオシンの収縮力勾配であり、もう1つは、長距離の表層流を可能にする表層の粘性の十分な高さである。これらの知見により、線虫の受精卵を効率よく極性化するための、大規模な細胞内表層流の発生に必要な物理的条件が明確になる。 Full Text PDF 目次へ戻る