Letter 生態:悪化する環境での個体群消滅の早期警告シグナル 2010年9月23日 Nature 467, 7314 doi: 10.1038/nature09389 消滅に向かって縮小しつつある動物個体群は、ロバストな個体群にはみられない動的な現象を示す可能性がある。個体数動態の分散スケーリングをはじめとするそうした現象の中には、個体群サイズの小ささと関連するものもあるが、密度依存的な非線形性によるものもある。個体群が消滅する原因の解明は数十年間にわたって理論生物学の中心的な問題の1つとなっているが、消滅の予測はいまだにできていない。今回我々は、個体群縮小の原因がその消滅の予測可能性に重要であることを示す。特に、環境の悪化は、基礎的な個体群成長方程式の分岐に相当する、個体群動態の転換点をもたらす可能性があり、この転換点を越えると、縮小した個体群はほぼ確実に消滅へ向かう。そうした場合、迫り来る消滅の前兆として臨界減速(CSD)が生ずると考えられる。我々は、オオミジンコ(Daphnia magna)の実験用複製個体群を用いた実験を行い、この仮説を検証した。環境条件下での制御された縮小によって実験的に誘導されるトランスクリティカル分岐を通過する個体群は、環境悪化の開始から臨界遷移までの間にCSDの統計学的特徴を示すことがわかった。一定環境にある個体群にはそうしたパターンが認められなかった。遷移が生ずる110日前(約8世代前)という早い時期に、4つの統計指標すべてで分岐に近づきつつある証拠がみられた。2つの合成指標で予測可能性が向上し、比較解析の結果、標準化のための参照個体群を用いず悪化環境の観察のみに基づいた早期警告シグナルは、悪化開始前の遷移動態の存在によって障害されていたことが明らかになり、環境悪化開始以前の信頼性の高い基準データの重要性が指摘された。個体群動態モデルでの分岐の普遍性は、この現象が一般的なものであることを示唆している。 Full Text PDF 目次へ戻る