Letter 化学:視覚における初期光異性化事象の円錐交差動力学 2010年9月23日 Nature 467, 7314 doi: 10.1038/nature09346 視覚の初期光化学事象は、ロドプシンの11-cisレチナール発色団の全trans型への変換であることが確認されてからずっと、この過程の分子レベルの詳細を実験的また理論的に解明する試みがなされてきた。0.65という高い量子収率、わずか200 fs以内で初期基底状態ロドプシン光生成物が生じること、また最初の安定なバソロドプシン中間体にかなりのエネルギーが貯蔵されることはすべて、異例な速さの高効率光活性化一方向反応を示唆している。ロドプシンの独特な反応性は、基底電子状態と励起電子状態のポテンシャルエネルギー面の円錐交差に起因するものであり、それによって光子エネルギーの化学エネルギーへの高効率超高速変換が可能となると一般的に考えられている。しかし、円錐交差の関与の直接的な実験的証拠を得ることは難しい。それは、反応分子の電子状態間のエネルギーギャップが極めて短い時間スケールの間に大きく変化するため、高い時間分解能と広いスペクトル観測窓を組み合わせた観測方法が必要となるからである。本論文では、20 fs未満の時間分解能と、可視から近赤外までのスペクトル範囲とをもつ超高速分光法によって、ロドプシン異性化における円錐交差につながる動力学が追跡可能であることを示す。反応物発光の消失とそれに続く光生成物吸収の出現を測定することによって、光励起フランク–コンドン領域から光生成物までのコヒーレント波束運動を追跡し、真の電子状態交差がかかわる分子動力学的計算結果と実験観測結果がよく一致することを見いだした。まとめるとこれらの結果は、視覚光化学における円錐交差の存在とその重要性に関する、これまでで最も有力な証拠となる。 Full Text PDF 目次へ戻る