Letter 系統分類:核タンパク質コード配列の系統ゲノミクス解析により明らかになった、節足動物の類縁関係 2010年2月25日 Nature 463, 7284 doi: 10.1038/nature08742 節足動物の目立って古い歴史、多様性、生態における重要性に触発され、その奥深い系統発生史を解明しようと数多くの試みがなされてきたが、過去20年にわたって盛んに行われた分子系統発生学研究の成果はまちまちである。陸生昆虫類(六脚類)が、陸生のムカデやヤスデ(多足類)よりも水生甲殻類のほうに近いという発見は、こういった研究の初期の例外的ともいえる成功例である。一般的には、限られた分類群や遺伝子の試料に基づく解析からは、矛盾していたり、根拠が薄弱だったり、解析条件に大きく左右されたりする結果が得られる場合が多かった。今回我々は、75種の節足動物について、核タンパク質をコードする62種の単一コピー遺伝子に由来する41キロ塩基以上のDNA整列配列を対象にして、尤度分析、ベイズ分析、最節約分析から強力な裏付けのある解析結果を得たことを報告する。これら75種は、節足動物の主要系統すべてからの代表的な種と、さらに外集団として緩歩動物と有爪動物を計5種加えたものである。今回の解析結果から、汎甲殻類(Pancrustacea:六脚類と甲殻類)という分類群は強く支持されたが、同時に、形態に基づく古典的な分類群である大顎類(多足類と汎甲殻類)のほうが、分子レベルの解析に基づく分類群であるParadoxopoda(多足類と鋏角類)よりも強く支持されることも示された。汎甲殻類には、六脚類に加えて、「甲殻類」の現存する3つの主要系統が含まれる。この3つはOligostraca(貝虫類、ヒゲエビ類、鰓尾類、および舌虫類)、Vericrustacea(軟甲類、フジツボ類、橈脚類、および鰓脚類)、Xenocarida(カシラエビ類とムカデエビ類)で、それぞれ、形態的に著しく違いのあるものを幅広く含んでいる。さらに、汎甲殻類の中で、Xenocaridaが長く探し求められてきた六脚類の姉妹群であることを突き止めた。この結果は、「甲殻類」が単系統性でないことを明確に示している。これらの結果から、動物界最大の門である節足動物について、統計学的に十分な裏付けのある系統発生学的分類の枠組みが得られる。これにより、1世紀にわたって時には激しく繰り広げられてきた節足動物の類縁関係を巡る議論が、決着に一歩近づいたことになる。 Full Text PDF 目次へ戻る