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物性:磁気双極子秩序を伴わない時間反転対称性の破れと自発的ホール効果

Nature 463, 7278 doi: 10.1038/nature08680

スピン液体とは、フラストレーションにより誘起される縮退した状態間の量子的または熱的揺らぎのために、スピンの秩序化または凍結が妨げられた、磁気的にフラストレートした系である。キラルスピン液体は仮説上のスピン液体の一種であり、印加磁場や磁気双極子長距離秩序がなくても、時間反転対称性が巨視的に破れている。このキラルスピン液体状態は20年以上前に提案されたにもかかわらず、その状態の実験的実現と観測は課題として残っている。このような系の特徴的な秩序パラメーターの1つとして、近接する3つのスピンによって定められる立体角、すなわちスカラースピンキラリティーの巨視的平均が挙げられる。しかし、これまで実験的に報告されてきたスピンキラリティーは、磁気双極子長距離秩序を伴った、あるいは印加磁場に誘起された同一平面上にないスピン構造に関連しており、それゆえに、キラルスピン液体状態が発見されたことはなかった。本論文では、磁気双極子長距離秩序がなくても、巨視的スケールで時間反転対称性が自発的に破れうることを示す実験的証拠を報告する。具体的には、フラストレートした金属磁性体Pr2Ir2O7における時間反転対称性の破れの有無を、異常ホール効果を用いて直接確認した。その結果、実験精度内で均一磁化がないゼロ磁場状態において、ホール効果が現れることを見いだした。これは、キラルスピン液体の出現を示唆する。一方、磁気測定の結果はスピンアイスルールの成立を示しており、この自発的ホール効果の起源はそれに付随したキラルスピンテクスチャーによるものと考えられる。

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