Letter

物理:ディラック方程式の量子シミュレーション

Nature 463, 7277 doi: 10.1038/nature08688

ディラック方程式は、量子力学を特殊相対論と融合することに成功している。これによって電子スピンを自然に記述し、反物質の存在を予測し、また水素原子のスペクトルを正確に再現できる。ディラック方程式が支配する領域、すなわち相対論的量子力学は、場の量子論への自然な移行だと考えられている。しかしディラック方程式は、クラインのパラドックスや、「ツィッターベヴェーグング」、すなわち自由な相対論的量子粒子の予期しないジグザグ運動など、いくつか特異な結果も予測している。予測されたこのような現象は、相対論的量子効果を理解するうえで重要な基本的な例だが、現実の粒子で観測するのは難しい。最近、さまざまな物理条件下で行う相対論的量子効果のシミュレーションへの関心が高まっており、シミュレーションパラメーターを調整できるため、さまざまな物理領域を調べることができる。本論文では、自由な相対論的量子粒子として振る舞うようにした単一の捕捉イオンを用いて、一次元ディラック方程式の原理を証明する量子シミュレーションを行った。粒子位置を測定して、時間の関数とし、正と負のエネルギーのスピノル状態のさまざまな初期重ね合わせに対するツィッターベヴェーグングと、相対的力学から非相対論的力学へのクロスオーバーを調べた。捕捉イオンの実験パラメーターを高いレベルで制御すれば、相対論的量子物理学の典型的な例をシミュレートすることが可能となる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度