Letter 細胞:E2fを欠失した網膜前駆細胞の分裂とアポトーシス 2009年12月17日 Nature 462, 7275 doi: 10.1038/nature08544 活性化型E2f転写因子(E2f1、E2f2、E2f3)は転写を誘導する作用をもち、重要な正の細胞周期調節因子と広く見なされている。実際に活性化型E2fは細胞を休止状態から回復させるし、Rb1ヌル細胞が「がん細胞周期」をたどるかどうかは、E2fに応じて決まる。ハエや哺乳類の繊維芽細胞では、活性型E2fがないと細胞周期が停止するが、それぞれ抑制型E2f、腫瘍抑制因子p53を除去すると、この停止が緩和される。したがって、活性型E2fが正常な分裂に不可欠かどうかは、議論の余地がある。また活性型E2fはアポトーシス促進因子としてもよく知られており、腫瘍形成を防ぐ働きをするが、E2f1は放射線照射が誘導するアポトーシスを抑える働きをする。ハエでは、このアポトーシス抑制はhid(Wrinkledともよばれる。哺乳類ではSmac/Diabloとよばれる)の抑制を介して起こる。しかし、哺乳類のSmac/DiabloはE2f1によって抑制されず、むしろ誘導されるので、哺乳類でこのアポトーシス抑制が起こる仕組みは不明である。また角化細胞では、生存の促進はDNA修復の標的の誘導を介して間接的に起こる。つまり、E2f1–3の直接的な生存促進機能や、放射線照射以外へのそのかかわりは明確に実証されていない。正常細胞におけるE2f1–3の機能をin vivoで解明するため、我々はこれまでに、中枢神経系の比較的単純な構成要素で生存能力を損なわずに遺伝的に操作できるマウス網膜に着目し、発生やがんの手がかりになる重要な知見を得てきた。本論文では、E2f1–3ヌル網膜前駆細胞や活性化ミューラーグリア細胞が、繊維芽細胞とは異なり、分裂能力をもつことを明らかにする。この作用は、Mycnとの機能的互換性によるものと考えられる。ただし、活性型E2fがないとp53デアセチラーゼSirt1の下方制御、p53の高アセチル化、アポトーシスの亢進が起こることから、in vivoでE2f–Sirt1–p53という生存にかかわる新しい系の存在が明確になった。したがって活性型E2fは、正常な哺乳類細胞の分裂に例外なく必要というわけではないが、発生において生存促進という予想外の役割を担っている。 Full Text PDF 目次へ戻る