Letter 化学:プロトン移動中のGFP構造変化のフェムト秒ラマン分光法によるマッピング 2009年11月12日 Nature 462, 7270 doi: 10.1038/nature08527 化学反応の中心となる過渡的な原子運動を追跡するには、一般に、10フェムト秒から1ピコ秒という分子振動の時間スケールでの高分解能多次元構造情報が必要である。単純な化学系については、原子運動やその結果として生じる反応動態を示す反応ポテンシャルエネルギー面をかなり詳細にマッピングすることが可能となっている。しかし、複雑な化学的あるいは生物学的変換の場合、そのような研究は依然として困難である。そのよい例がオワンクラゲ(Aequorea victoria)から得られる緑色蛍光タンパク質(GFP)で、これは高効率の生物発光を示すことから、遺伝子発現マーカーとして広く使われている。この発光が励起状態プロトン移動(ESPT)に起因することは知られているが、その過程の原子レベルの詳細については、まだ十分に解明されていない。今回我々は、フェムト秒誘導ラマン分光法によって、電子的に励起されたGFP発色団の十分詳細な時間分解振動スペクトルを得て、蛍光型GFPを形成するプロトン移動にかかわる骨格運動を明らかにした。特に、この共役発色団の両端にあるC–O伸縮モードとC=N伸縮モードという2つのマーカーバンドの振動数と強度が、280フェムト秒の周期で位相がずれて振動することを観測している。これらの振動が瞬間励起されたフェノキシル環の低振動数運動によるものであり、この運動によって発色団の形状がESPTを起こすように最適化されると考えられる。今回の研究結果は、フェムト秒誘導ラマン分光法が、多次元多原子反応座標を構成するリアルタイム原子核動態を明らかにする強力な方法であることを示している。 Full Text PDF 目次へ戻る