Letter 生化学:タンパク質の触媒作用と設計への結合エネルギーの利用 2009年10月29日 Nature 461, 7268 doi: 10.1038/nature08508 酵素は、基質結合エネルギーを利用して、基底状態の会合を促進し、反応遷移状態を選択的に安定化する。単量体で働くホーミングエンドヌクレアーゼIであるAniIは、高い配列特異性で20塩基対(bp)のDNA標的部位を中央で切断し、酵素のアミノ(N)末端ドメインは標的部位の左(−)側と広範囲にわたる相互作用をするが、類似の構造をしたカルボキシ(C)末端ドメインは右(+)側と相互作用をする。今回我々は、この酵素–DNA複合体がおおよそ二回対称であるにもかかわらず、基質結合に関する相互作用は境界面の(−)側に、遷移状態の安定化にかかわる相互作用は(+)側にほぼ完全に分離されていることを示す。DNA標的部位中で単一の塩基対を置換すると触媒効率が低下するが、(−)側の半分のDNAに導入した変異ではほぼ、解離定数(KD)とシングルターンオーバーの状件下でのミカエリス定数(KM*)のみが増加し、(+)側の半分への変異導入では主としてターンオーバー数(kcat*)が低下する。(−)側の変異によってもたらされる活性低下は、酵母表面に提示されたエンドヌクレアーゼへの基質繋留により抑制できるが、(+)側の変異による低下はこれでは抑制できない。酵素–基質結合エネルギーの触媒作用への使用に関するこの顕著な非対称性は、遺伝子治療などへの応用のために遺伝子標的部位を切断するエンドヌクレアーゼの再設計に直接関連する。(−)側に新規な特異性をもたせるようにコンピューター再設計した酵素はKM*の変化により新たな特異性を示すのに対して、(+)側の特異性を変化させる再設計ではkcat*が変化する。以上の結果は、古典的な酵素学と現代のタンパク質設計の情報を相互に伝え合う手法の一例である。 Full Text PDF 目次へ戻る