Letter 脳:識字の解剖学的特徴 2009年10月15日 Nature 461, 7266 doi: 10.1038/nature08461 言語はヒト独自の能力で、ヒトとチンパンジーの進化の径路が分岐した後の約600万年間のどこかの時点で獲得されたものである。言語的に最も劣悪な環境下にあっても、子どもは高度な言語系を自然に発達させる。一方、読字は、集中的な教育と練習なしでは発達しない、学習によって得る能力である。したがって読字学習は、脳の個体発達上の構造的変化を伴う可能性が高いが、子どもの脳では、生物学的、環境的、社会的な影響による発達的な変化が同時に進行するため、読字学習による変化を分離することは不可能に近い。コロンビアではゲリラが一般社会へ復帰しつつあり、彼らは大人になって初めて読字学習を始める。これは、子どもの脳にみられる発達に伴う複雑な要因を切り離して、識字が脳に及ぼす変化を調べることができる、まれな機会となる。今回、成人後に読字学習を行った人(遅延識字者)の構造学的脳スキャンを、条件を注意深く合わせた非識字者のそれと比較した。遅延識字者では、脳梁膨大部の白質が大きく、両側の角回、背側後頭回、中側頭回、左側の縁上回と上側頭回で灰白質が大きかった。これらの脳領域が上手な読字に重要かどうかを、子どものときに読み方を習った人(早期識字者)で調べた。遅延識字者で非識字者より白質が多かった脳梁を介する、左右の角回と背側後頭回を結ぶ解剖学的結合があること、読字は、物の名付けと比較して、左右の角回間の機能的半球間結合を増すこと、左角回の活動が、左背側後頭回から左縁上回への情報の流れをトップダウン的に制御していることがわかった。これらの知見は、遅延識字者で特定されたこれらの領域が、早期識字者の読字中に(物の名付けと比較して)どのように相互作用しているかを示している。 Full Text PDF 目次へ戻る