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海洋:北極海にみられる白亜紀後期の季節的海洋変動

Nature 460, 7252 doi: 10.1038/nature08141

現代の北極海は、全球変動のバロメーターであり、地球温暖化を増幅していると見なされている。したがって、過去の北極海の変化の記録は、古気候を再構成するのに極めて重要である。白亜紀後期(6,500万〜9,900万年前)の温室期における北極海の状態はほとんどわかっていないが、このような時代の記録は、近未来の温暖化した気候における北極海の振る舞いを知る重要なてがかりとなる可能性がある。本論文では、北極海のアルファ海嶺から得られた、季節的に分解された白亜紀の堆積物記録を提示する。この古堆積物トラップから、白亜紀の海洋生物学的炭素ポンプの働きについての新たな知見が得られる。季節的な一次生産は珪藻類が優占していたが、これまでの仮説とは異なって、湧昇とは関係していなかった。生産は成層した水柱内部で生じ、ブルーム(大増殖)には特異的に適応した種が含まれ、これらは現代の北太平洋亜熱帯旋流の種や地中海の腐泥にみられる種に似ている。現在は、CO2レベルの上昇と温暖化によって全球海洋の成層化が強化されているため、成層に適応したこの生産様式は、さらに広がるかもしれない。季節的な珪藻類の生産とフラックスを示す今回の証拠によって、氷のない夏が立証されるが、珪藻軟泥内部での陸成堆積物の集積が少ないことは冬季における間欠的な海氷の存在と一致しており、この時代の年平均温度を15 °Cとする最近示唆された説ではなく、白亜紀後期の北極海の水温が低かったことを示す広範な証拠のほうを裏付けている。

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