Letter 免疫:mTORは記憶CD8 T細胞の分化を調節する 2009年7月2日 Nature 460, 7251 doi: 10.1038/nature08155 記憶CD8 T細胞は防御免疫の重要な構成要素であり、有効な記憶T細胞応答の誘導は、慢性感染や腫瘍に対するワクチンの主要な目標である。記憶応答の規模を増大させるワクチン接種計画の設計には相当な努力が注がれているが、記憶T細胞の機能的な質を改善する戦略の開発はあまり重要視されてこなかった。今回我々は、mTOR(mammalian target of rapamycin、FRAP1としても知られる)が、記憶CD8 T細胞分化の主要な調節因子であり、また予想に反して、免疫抑制剤ラパマイシンが記憶CD8 T細胞の生成に免疫賦活的な活性をもつことを示す。マウスで、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスの急性感染後にラパマイシンを投与すると、ウイルス特異的CD8 T細胞の数ばかりでなく質も増強される。同様の影響は、非増殖性のウイルス様粒子を使ったワクチンによるマウスの免疫後にもみられる。さらに、ラパマイシン投与は非ヒト霊長類でも、修飾ワクシニアウイルスアンカラでのワクチン接種後の記憶T細胞応答を増強した。ラパマイシンはT細胞応答の増殖期と収縮期の両方に影響を及ぼし、増殖期には記憶前駆細胞の数を増加させ、収縮期(エフェクター細胞から記憶細胞への移行期)には記憶T細胞の分化プログラムを加速する。抗原特異的CD8 T細胞で、mTOR、raptor(4932417H02Rikとしても知られる)、もしくはFKBP12(FKBP1Aとしても知られる)の発現をRNA干渉によって阻害する実験で、mTORが本来的にmTORC1(mTOR複合体1)経路を介して作用して記憶T細胞分化を調節することが明らかになった。したがってこの研究は、記憶細胞形成の分子的経路を同定し、またワクチンや感染によって誘導された記憶T細胞の機能的な質を改善する有効な方法を示している。 Full Text PDF 目次へ戻る