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物理:コヒーレント暗状態分光法による光学的に制御された核場ロッキング

Nature 459, 7250 doi: 10.1038/nature08120

半導体量子ドット内部に捕捉された単一の電子や正孔スピンは、提案されている多くの量子論理デバイスの基礎となっている。III-V族物質では、単一スピンの2つの基底状態の間の共鳴およびコヒーレンスは、超微細相互作用を通して必然的に格子核スピンの影響を受けるが、単一スピンのダイナミクスも核環境に影響を及ぼす。最近では、核スピンゆらぎを抑えて量子ドットのスピンコヒーレンスを保護する取り組みがなされてきた。しかし、核ゆらぎの同時抑制による単一ドット内単一スピンのコヒーレント制御は、まだ実現されていない。今回我々は、単一電荷をもつ量子ドット中の核場ゆらぎを、熱的な値を大きく下回るまで抑制したことについて報告する。これは、コヒーレント暗状態分光法により測定した単一電子スピンの位相緩和時間T2*の増加によって示される。核ゆらぎの抑制は、正孔スピンによる動的な核スピン偏極フィードバック過程に起因することが見いだされており、この過程での核場の安定値は、固定レーザー出力ではレーザー周波数によってのみ決まる。この核場ロッキングは、3レーザー測定においても実証されており、電子スピンT2*を数百倍に増加できる可能性が示唆されている。これは、「スピンエコー」タイプの手法を使わずに電子スピンコヒーレンス時間を長くする、単純かつ効果的な方法である。我々の結果によって、最小限の統計的ブロードニングで単一スピンを繰り返し制御・測定するための核スピン環境が再現性よく用意できるようになると期待される。

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