Article 発生:線虫の長寿変異体における体細胞性から生殖系列性への転換 2009年6月25日 Nature 459, 7250 doi: 10.1038/nature08106 多細胞生物の生殖系列細胞は、一生の間に老化していく体細胞とは異なり、本質的には不死の系譜をたどる。体細胞のゲノム不安定性は加齢に伴って増大し、体細胞の維持におけるこのような衰えは、細胞老化という犠牲を払って生殖への資源再配分を促進するような調節だと考えられる。今回我々は、線虫(Caenorhabditis elegans)の長寿変異体では、遺伝子発現プログラムの体細胞性から生殖系列性への転換がみられることを示す。これは本来ならば、生殖系列に限定されている遺伝子発現プログラムである。インスリン様シグナル伝達の減少によって、消化管と外胚葉性組織では、生殖系列に限定されるpie-1およびpglファミリー遺伝子の体細胞における異所的発現が引き起こされる。インスリン様シグナル伝達の主要な転写エフェクターであるforkhead boxO1A(FOXO)転写因子DAF-16は、pie-1プロモーターに直接結合することによりpie-1の発現を制御する。このようなインスリン様シグナル伝達変異体の体細胞組織は、生殖系列により近い性質をもっており、遺伝毒性ストレスから保護される。寿命の延長を引き起こす細胞質シャペロニン複合体構成因子の遺伝子不活性化もまた、体細胞でのPGL-1の異所的発現を引き起こす。これらの結果は、線虫の長寿変異体では、体細胞による生殖系列特性の獲得が細胞の健常性増大と生存に寄与していることを示している。 Full Text PDF 目次へ戻る