Letter

海洋:氷河期の海洋における栄養制限の緩和から推測される炭素ポンプの増強

Nature 459, 7250 doi: 10.1038/nature08101

現在の東部赤道太平洋(EEP)は、大気への炭素の大きな海洋供給源である。EEPの広い海域全体にわたって、一次生産力はケイ酸と鉄の利用可能度によって制限されており、この制約のために深海への有機炭素の移出は、深層水の湧昇によって生ずる二酸化炭素の放出を埋め合わせることができない。鉄が塵によって氷河期の海洋へ運ばれることで、この海域における一次生産力が増大し、深海への炭素移出が増加し、氷河期に大気中二酸化炭素濃度が低下した可能性が示唆されている。EEPのこのような役割は、海底の氷河期堆積物に記録されている有機炭素の埋積速度が高いことで裏付けられるが、オパールの集積速度は低いことから、氷河期の二酸化炭素を相当度減少させる海域としてのEEPの重要性に疑問が投げかけられている。本論文では、新しいケイ素同位体の記録を提示する。この記録は、氷河期のEEPにおけるオパール集積速度の逆説的な低下は、塵の供給量増大によって鉄の利用可能度が上昇した条件下で珪藻類のケイ素と鉄の取り込み量比が低下した結果であることを示唆している。したがって我々の研究は、最終氷期にこの海域では生物ポンプが活性化され、氷河期の二酸化炭素の削減に寄与したという考えを裏付けている。さらに、ケイ素と窒素の同位体の変化から得られた証拠からは、現在の状況とは対照的に氷河期においては、この海域の生物生産力は、鉄、ケイ素および窒素の利用可能度によって制約されていなかったと推測される。我々は、氷河期海洋の低緯度域では、おそらくリンの制限のみによって制約される二酸化炭素生物ポンプの活性化が、より一般的に生じていたと考えている。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度