Letter 腫瘍:乳がんの脳転移を仲介する遺伝子群 2009年6月18日 Nature 459, 7249 doi: 10.1038/nature08021 乳がんの脳転移に関する分子基盤は明らかではない部分が多い。脳での再発は通常、乳がん切除後数年が経過してから起こることから、播種したがん細胞が脳に転移するには特化した機能を獲得しなくてはならないことが示唆される。本論文では、乳がんの脳転移には無窓毛細血管からの血管外遊出を仲介する因子が関与しており、脳血管関門の通過や脳への定着を高める特異的な因子によって補われることを示す。我々は、進行がん患者から、選択的に脳へ浸潤する細胞を単離した。これらの細胞や臨床検体の遺伝子発現解析を機能解析と組み合わせて、シクロオキゲナーゼCOX2(別名、PTGS2)、上皮増殖因子受容体(EGFR)のリガンドであるHBEGF、およびα2,6-シアリルトランスフェラーゼST6GALNAC5が、がん細胞の脳血管関門の通過にかかわるメディエーターであることを同定した。EGFRリガンドとCOX2は、乳がんの肺への浸潤に関係するが、骨や肝臓への浸潤には関係しないことが以前に報告されており、脳転移と肺転移でこれらのメディエーターが共通して使われていることが示唆される。一方、ST6GALNAC5は特異的に脳転移に関与する。通常は脳に限局して発現するST6GALNAC5が、乳がん細胞に発現すると、脳内皮細胞への接着と脳血管関門の通過を促進する。このように脳のシアリルトランスフェラーゼが転用されていることは、臓器特異的な転移を引き起こす相互作用に細胞表面での糖鎖付加が役割を果たしていることを強調している。 Full Text PDF 目次へ戻る