Letter 細胞:造血器悪性腫瘍はクロマチン結合PHDフィンガーの制御不全によって生じる 2009年6月11日 Nature 459, 7248 doi: 10.1038/nature08036 ヒストンH3リシン4のメチル化(H3K4me)は、遺伝子発現、エピジェネティック状態、および細胞独自性の制御において極めて重要な要素であることが示されている。H3K4meの生物学的意味は、H3K4meの多様な状態を認識する植物ホメオドメイン(PHD)フィンガーなどの、進化的に保存されたモジュールによって解釈される。PHDフィンガーの調節不全は、がん、免疫異常、神経疾患など、いくつかのヒト疾患と関係があるとされている。今回我々は、マウスモデルにおいて、PHF23またはJARID1A(KDM5AまたはRBBP2としても知られる)のカルボキシ末端PHDフィンガーなどのトリメチル化H3K4(H3K4me3)結合PHDフィンガーと、ヒトの白血病で一般的な融合相手であるヌクレオポリン-98(NUP98)との融合により強力な腫瘍性タンパク質が生成され、血球分化を抑止して、急性骨髄性白血病を発病させることを報告する。この過程では、白血病誘発にはH3K4me3/2マークを特異的に認識するPHDフィンガーが不可欠であった。H3K4me3の結合を抑制するPHDフィンガー変異でも、白血病性形質転換が起こらなくなる。NUP98-PHD融合により、細胞系列特異的な転写因子(Hox、Gata3、Meis1、Eya1、Pbx1)をコードする多くの遺伝子座で、分化に伴うH3K4me3の除去が妨げられ、マウスの造血幹細胞/前駆細胞で活発な遺伝子転写が起こった。機構的には、NUP98-PHD融合は、ポリコームを介した遺伝子サイレンシングよりも優勢な「クロマチン境界因子」として作用し、発生で非常に重要な遺伝子座を、活性クロマチン状態に「ロック」する。この状態(ヒストンアセチル化が誘導されたH3K4me3)は白血病幹細胞を定義する特徴である。総合すると今回の研究は、哺乳類の発生において、特定ヒストンの修飾の「エフェクター」であるPHDフィンガーの脱制御が、発生上重要な遺伝子座上のエピジェネティックな動態を乱し、細胞の運命決定を損なわせ、腫瘍形成さえも引き起こすことを示す、我々の知るかぎりで最初の報告である。 Full Text PDF 目次へ戻る