Letter

発生:特定の因子がマウス中胚葉を心臓組織へと分化転換させる

Nature 459, 7247 doi: 10.1038/nature08039

心疾患は、欧米における死亡率と疾患率の主要因である。心臓は損傷後ほとんど再生しないため、心筋細胞の新生に必要な因子の解明には多大な関心が寄せられている。心臓分化を制御する分子ネットワークがかなり解明されてきたにもかかわらず、哺乳類の細胞や組織において心臓遺伝子プログラムのde novo活性化に必要な、単一の転写因子あるいは転写因子の組み合わせは示されていない。本研究では、マウス中胚葉を心筋細胞へ分化転換させるために必要な最小条件を明らかにした。心臓の2つの転写因子Gata4とTbx5、およびBAFクロマチンリモデリング複合体の心臓特異的サブユニットBaf60c(別名Smarcd3)が、本来ならば心臓にはならない後部中胚葉や羊膜の胚体外中胚葉などのマウス中胚葉性細胞を、拍動する心筋細胞へ異所的に分化誘導できることがわかった。Baf60c存在下でGata4は、心臓関連遺伝子の異所的な発現を誘導する。さらにTbx5を追加すると、収縮性心筋細胞への誘導と非心臓性中胚葉性遺伝子の抑制が起こる。Baf60cはGata4とTbx5の異所的な心臓形成の必須因子であり、これはGata4の心臓遺伝子プロモーター特定領域への結合を可能にすることによる。この結果は、BAF複合体が組織特異的な制御を行い、また分化誘導機能をももち合わせていることを示している。これらの因子の複合的機能が細胞分化を制御する堅牢な機構を作り上げており、再生を目的とした新生心筋細胞の再プログラミングを可能にするだろう。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度