Letter 生化学:ポリケチドの多様化におけるメタモルフィック酵素集合体 2009年6月4日 Nature 459, 7247 doi: 10.1038/nature07870 天然物の化学的多様性は、二次代謝における生合成経路の出現とその継続的進化によって増大する。しかし、代謝が多様化するための酵素の共進化については、特に生化学レベルではほとんど解明されていない。本論文では、藍藻Lyngbya majuscula由来の、配列相同性が例外的に高い2つの類似した集合体が、キュラシンA経路(Cur)ではβ分岐シクロプロパンを、jamaicamide経路(Jam)では塩化ビニル基を形成することを明らかにする。集合体の構成成分には、ハロゲナーゼ、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル酵素カセット(ポリケチドのβ分岐形成に使われる)、エノイルレダクターゼドメインが含まれている。CurAのハロゲナーゼと、Cur、Jamの両方のデヒドラターゼ(ECH1)、デカルボキシラーゼ(ECH2)、エノイルレダクターゼドメインを生化学的に調べて、シクロプロパンと塩化ビニルの形成機構を決定した。予想外だったのは、ポリケチドのβ分岐形成経路の変更が、非ヘムFe(II)、α-ケトグルタル酸依存性酵素であるCurハロゲナーゼの働きによる(S)-3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルのγ塩素化という段階の導入によっていたことである。これらの系で異なっているのは、CurのECH2はα,βエノイルチオエステルの形成を触媒するが、JamのECH2のほうは、3-メチル-4-クロログルタコニル脱カルボキシル化産物のβ,γエノイルチオエステルの選択的生成によって塩化ビニル基を形成することである。さらにCurFのエノイルレダクターゼドメインは、正統的なα,β C=C飽和反応ではなく、CurのECH2の塩素化産物に対するこれまで前例のないシクロプロパン化反応を特異的に触媒することがわかった。したがって、塩素化とポリケチドβ分岐形成との組み合わせは、ECH2とエノイルレダクターゼの作用機構の多様化と合わせて、シクロプロパンと塩化ビニル基の形成を起こさせる。これらの結果は、多酵素複合体系に起こった進化事象の並行的な相互作用が、二次代謝産物の官能基の多様性を生み出すことを明らかにしている。 Full Text PDF 目次へ戻る