Letter 遺伝:培養酵母と野生酵母の集団ゲノミクス 2009年3月19日 Nature 458, 7236 doi: 10.1038/nature07743 酵母の1つであるSaccharomyces cerevisiaeのゲノムの全塩基配列が1996年に解読されて以来、多数のゲノムの全塩基配列が解読され、それに伴ってゲノム進化の解明が大いに進んだ。自然界での酵母の生態、生活史についてはほとんどわかっていないが、生態的分布、地理的分布、集団構造、有性生殖と無性生殖についての研究は増えつつある。それに比べると、集団内および種内で異なった環境への適応、表現型の差異、生殖的隔離を生じさせる進化過程については、全ゲノムレベルでの解明が進んでいない。本論文では、パン酵母のS. cerevisiaeとこれに最も近縁なSaccharomyces paradoxusの70余りの分離株のゲノム塩基配列を、1〜4倍あるいはそれ以上のカバー率で提示する。遺伝子含量、一塩基多型、ヌクレオチドの挿入と欠失、コピー数、転移因子における変異を調べたところ、表現型の変異は、ゲノム全域規模での系統発生上の類縁関係との間に大まかな相関がみられた。S. paradoxusの集団は地理的境界に沿ってうまく線引きできるが、S. cerevisiaeでは世界各地の分離株の間で変異の差異が小さく、S. paradoxusの1つの集団内の差異に相当する程度であった。少数回の栽培化で現在のパン酵母が生じたのではなく、S. cerevisiaeの集団構造は、地理的に隔離された明確にほかと区別できる少数の系統と、それらのさまざまな組み合わせで構成されており、ヒトの介在により交雑が起こって既存の変異の新たな組み合わせが生じる機会が提供されたとの見方が裏付けられる。 Full Text PDF 目次へ戻る