Letter 構造生物学:ヒト細胞内におけるタンパク質の高分解能多次元NMR 2009年3月5日 Nature 458, 7234 doi: 10.1038/nature07839 in-cell NMRは、同位体を利用した多次元NMRの測定技術で、生きた細胞内のタンパク質のコンホメーションと機能の原子レベルでの観察を可能とする。この方法は、これまで細菌に大量発現されたタンパク質に適用され、細胞内でのタンパク質とリガンドの相互作用やコンホメーションについての知見を与えてきた。しかし、真核細胞におけるin-cell NMRは、アフリカツメガエルの卵母細胞に限られていた。一般的な真核細胞でのin-cell NMR実験が困難だったのは、同位体標識したタンパク質を真核生物の体細胞へ効率よく導入する方法がなかったからである。今回我々は、生きたヒト細胞中のタンパク質の高分解能異種核二次元(2D)NMRスペクトルを測定するための方法を開発した。タンパク質は、共有結合によって連結した細胞膜透過ペプチドと細胞のピレン酪酸処理により、細胞質へと導入される。その後タンパク質は、細胞内在性の酵素活性、あるいは細胞内の還元的環境下における自然発生的な還元切断によって、膜透過ペプチドから解離する。ヒト細胞内における3種類のタンパク質の異種核2Dスペクトルから、in-cell NMRが細胞内のタンパク質の相互作用やプロセシングの研究に広く使えることが示された。FKBP12(FKBP1Aとも呼ばれる)のin-cell NMRスペクトルから、このタンパク質が細胞外に投与した免疫抑制剤と特異的複合体を形成することが示され、in-cell NMRが薬剤のスクリーニングに役立つことが実証された。またin-cell NMRスペクトルにより、細胞内環境ではユビキチンの水素交換速度が、顕著に上昇していることが明らかになった。この現象は、内在性タンパク質群との複数の相互作用に起因する可能性がある。 Full Text PDF 目次へ戻る