Letter

構造生物学:In-cell NMR分光法による生きた細胞中のタンパク質の構造決定

Nature 458, 7234 doi: 10.1038/nature07814

精製されたタンパク質についての単結晶や水溶液中の三次元(3D)構造決定のための方法は、広く用いられているにもかかわらず、生きている環境で「働いている」タンパク質を原子分解能で研究することは、分子生物学のまだ達成されていない主要な目標の1つとなっていた。NMRのハードウエアや方法論の最近の発展により、細胞中の高分子について、高分解能異種核多次元NMRスペクトルの測定が可能となった(in-cell NMR)。コンホメーション変化や動態、結合などの、いろいろな細胞内の事象が、この方法により研究されてきた。しかし、低い感度や試料の短い寿命が、今までin-cell NMRを用いてタンパク質の構造を決定するのに十分な構造情報を取得することを妨げてきた。今回、我々の知るかぎり初めての、生きた細胞から得た情報のみに基づいて計算したタンパク質の3D構造を示す。高度好熱菌であるThermus thermophilus HB8由来で、重金属結合タンパク質と想定されるTTHA1718を、大腸菌(Escherichia coli)細胞内で大量発現させ、その構造をin-cell NMRを用いて解いた。生きている大腸菌試料の低い感度や不安定性による問題を克服するため、間接観測軸に非線形サンプリングを用いて、3D NMRスペクトルの迅速な測定を行った。ほとんどすべての予想される主鎖NMRシグナルとほとんどの側鎖のNMRシグナルを観測し、帰属を行うことで、高精度(主鎖の二乗平均偏差が0.96 Å)の構造を計算することができ、これは独立に決定したTTHA1718のin vitroの構造と非常によく似ていた。このように、in-cell NMR法は、生きた環境での高分解能で正確なタンパク質の構造を決定できる。

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