Letter 構造生物学:ヒト・アロマターゼにおけるアンドロゲン特異性とエストロゲン合成の構造基盤 2009年1月8日 Nature 457, 7226 doi: 10.1038/nature07614 アロマターゼシトクロムP450は、アンドロゲンからのすべてのエストロゲン生合成を触媒することが知られている、脊椎動物で唯一の酵素である。それゆえ、アロマターゼ阻害剤はエストロゲン依存性乳がんの最先端の治療法となっている。アロマターゼは、各段階が1モルの酸素と1モルのNADPHを必要とする3段階の反応により、酸化還元パートナーであるシトクロムP450レダクダーゼと共役して、アンドロステンジオンとテストステロン、16α-ヒドロキシテストステロンをそれぞれ、エストロンと17β-エストラジオール、17β,16α-エストリオールに変換する。反応の最初の2段階はC19-メチルの水酸化であり、3番目の段階にはステロイドA環の芳香族化がかかわっていて、これはアロマターゼ特有の反応である。多くのP450は基質選択性があまり高くないのに対して、アロマターゼがほかのP450と異なる特徴は、アンドロゲン特異性である。小胞体膜のアロマターゼの構造は、何十年にもわたり解かれておらず、生化学的反応機構の解明を妨げている。今回我々は、ヒト胎盤アロマターゼの結晶構造を示す。これは、哺乳類の天然・全長P450として、またホルモン生合成経路中のP450として、現在までに唯一結晶化されたものである。薬物や生体異物の代謝にかかわる多くのミクロソームP450の活性部位とは異なり、アロマターゼは、結合したアンドロステンジオン分子がぴったりと収まるようなアンドロゲン特異的なクレフト(くぼみ)をもっている。疎水性残基と極性残基が、ステロイドの骨格に対して見事な相補性を示して並んでいる。触媒として働くのに重要な残基の位置は、反応機構の解明に役立つ。疎水的なアミノ末端領域と触媒クレフトに通じる開口部が並んだ位置関係をとっていることは、脂溶性の基質が活性部位に接近するのに、酵素の膜への係留が必要な理由を明らかにしている。酵素のアンドロゲン特異性と独自の触媒機構の分子基盤は、次世代のアロマターゼ阻害薬の開発に使える可能性がある。 Full Text PDF 目次へ戻る