Letter 腫瘍:リボソームタンパク質ハプロ不全によりMycの発がん性が抑制される 2008年12月18日 Nature 456, 7224 doi: 10.1038/nature07449 Mycがん遺伝子は、リボソームタンパク質、翻訳開始因子、RNAポリメラーゼIIIやリボソームDNAなど、タンパク質合成装置を構成する諸因子の発現を制御している。細胞のタンパク質合成能の亢進が発がんに通じる多段階過程に影響を及ぼすのか否か、また及ぼすとすればどのように影響しているのかは、まだ明らかにされていない。本論文では、リボソームタンパク質がヘテロ接合体であるマウスを遺伝学的な手段として用いて、Eµ-Myc/+トランスジェニックマウスでのタンパク質合成の亢進を正常レベルに戻し、このような状況ではMycの発がん性が抑制されることを示す。この知見により、タンパク質合成を増強するMycの能力が直接的に細胞サイズを増加させること、またこれは、Mycによって転写レベルで制御されている既知の細胞周期標的因子には依存せずに、細胞周期の進行を速めるのに十分であることが明らかとなる。さらに、タンパク質合成が正常レベルに戻ると、Mycを過剰発現している前がん細胞がプログラム細胞死によって、より効率的に排除される。我々の知見は、発がんシグナル下流の全般的なタンパク質合成速度の増加を、選択的なメッセンジャーRNAの発現制御に使われる翻訳開始の局面における特定の分子異常に結びつける新しいメカニズムを明らかにする。Mycの過剰な活性化の下流でのcap依存性翻訳の異常な亢進が、正確な細胞分裂の進行に必要なIRES(internal ribosomal entry site)依存性翻訳への翻訳の切り替えを、特異的に障害することがわかった。この翻訳の切り替えの破綻が、結果として内因性IRES依存型Cdk11(Cdc2lやPITSLREとしても知られている)の細胞分裂特異的な発現の減少を起こし、その結果、細胞質分裂は障害され、Eµ-Myc/+マウスでは中心体の数の増加やゲノムの不安定性と関連する。Eµ-Myc/+マウスで正確な翻訳調節が回復すると、ゲノムの不安定性が抑制される。遺伝子発現やゲノムの安定性、がん化の開始は、ポストゲノムレベルにおけるがん形成の分子機構を理解する上で重要な意味をもっており、今回の結果は、翻訳調節の障害がどのようにしてそうした現象に極めて特異的な結果をもたらすかを明らかにしている。 Full Text PDF 目次へ戻る