出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)の一倍体細胞は、典型的な細胞シグナル伝達系を使って、接合相手となる可能性のある酵母が分泌する接合フェロモンの細胞外濃度についての情報を伝達する。細胞が異なるフェロモンの濃度に応じて特異的な反応を起こせるかどうかは、フェロモン濃度に関してどのくらいの情報量を伝達系が伝えられるかにかかっている。今回我々は、マイトジェン活性化プロテインキナーゼFus3がかかわる負のフィードバックが迅速に働き、系の下流の用量反応と受容体-リガンド結合の用量反応が一致するように調整することを明らかにする。受容体占有率と下流の用量応答との直線関係で表されるこの「用量反応調整」によって、異なった受容体占有率に対応する下流の応答がそれぞれ異なったものになり、またシグナル伝達の際に生じる確率論的ノイズの増幅が抑えられるため、情報伝達の忠実度が上昇する。また、このフィードバックの標的の1つが、RGS(regulator of G-protein signalling)タンパク質であるSst2の、これまで不明だったシグナル促進機能であることも明らかにする。今回の知見は、シグナル伝達系の用量反応調整を行って情報伝達の忠実度を高めるのに、負のフィードバックが一般的な機構として使われていることを示唆している。