Letter 細胞:核辺縁部への染色体の係留がゲノムの安定性の維持に果たす役割 2008年12月4日 Nature 456, 7222 doi: 10.1038/nature07460 反復DNA配列は生物によってはゲノムの半分を占めることもあるが、相同的組み換えを起こすことが多く、DNAの獲得や喪失が起こってゲノムが不安定になることがある。DNAを凝縮して抑制型のクロマチンにすると組み換え装置の接近を妨げることになり、これが反復配列の安定性を維持する機構となっていると広く考えられている。この考え方とよく符合する観察結果が出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)で得られている。酵母の非常に反復性の高いリボソームDNA(rDNA)の安定性にはSir2クロマチンサイレンシング複合体が必要であり、この複合体はrDNAサイレンシングと呼ばれる過程によって、反復配列内に挿入された外来プロモーターやトランスポゾンからの転写も阻害する。本論文では、rDNA関連サイレンシングタンパク質と核内膜(INM)の2つのタンパク質との相互作用によって、出芽酵母のrDNAの反復配列を安定化するタンパク質ネットワークを明らかにする。このINMタンパク質またはサイレンシングタンパク質を欠失させると、核辺縁部に位置するrDNAが減少し、核小体と核質の境界が崩れ、組み換えフォーカスの形成が促され、反復配列を不安定にする。また、人為的にrDNA反復配列をINMへと配置すると、反復配列の辺縁部への係留に通常必要なrDNA関連サイレンシングタンパク質をもたない細胞でも、不安定化が抑えられる。Sir2や関連する核小体因子とは対照的に、このINMタンパク質はrDNAのサイレンシングには必要ではないことから、rDNA遺伝子座での組み換えの抑制には、Sir2に依存したサイレンシングだけでは不十分なことがわかる。これらの知見は染色体の核辺縁部への配置にINMタンパク質が役割を果たしていることを示しており、rDNAを安定化するには核辺縁部への係留が必要なことが明らかである。今回調べたINMタンパク質は後生動物でよく保存されており、染色体の構成にかかわることが知られている。これらの結果から、INMタンパク質と染色体タンパク質の相互作用によりゲノムの安定性が維持されるという古い起源をもつ機構が明らかになった。 Full Text PDF 目次へ戻る