Letter 気候:更新世後期の気候強制力に対する大西洋鉛直循環の応答 2008年11月6日 Nature 456, 7218 doi: 10.1038/nature07425 海洋の鉛直循環中で、氷期変化を駆動する要因が何かはよくわかっていない。SPECMAP(Spectral Mapping of Climate Parameters)プロジェクトでは、過去4回の氷期サイクルにわたって20の気候変数を比較した結果に基づき、北半球高緯度域における夏の日射(すなわち、ミランコビッチ強制力)は、100 kyrの離心率サイク、41 kyrの傾斜角サイクル、および23 kyrの歳差運動サイクルで、海洋循環とその他の気候応答が同じように推移するように働いていると提案している。しかしながら、SPECMAPでは大西洋の数地点のみで海洋循環応答を分析したにすぎず、また、海洋循環応答の位相が観測地点や軌道バンドによって変化することは既に示されている。本論文では、大西洋全域に広がる24の地点で、過去425 kyrにわたる海洋底δ13C(海洋栄養含量の代理指標)にみられる軌道応答の位相を測定することにより、SPECMAPの仮説を検証する。水深3,000〜4,010 mでのδ13C応答に基づき、ミランコビッチ強制力の極大が、傾斜角バンドにおいてはより強い中深度の鉛直循環に対応するが、歳差運動バンドにおいてはより弱い鉛直循環に対応することがわかった。このことは、大西洋の鉛直循環が北半球高緯度域における氷体積や夏の日射以外の要因に非常に敏感であることを示唆している。これらの過程をよりよく解明できれば、鉛直循環速度の推定値が、最終氷期極大期で40パーセント増加から40パーセント減少の間であったり、大気中CO2の予測される増加に対する応答としてこれからの140年間での減少が10〜50パーセントの間であったりといった、モデル推定値の改善につながる可能性がある。 Full Text PDF 目次へ戻る