Letter 視覚:アカゲザルの視覚野における運動視差からの奥行きの表現 2008年4月3日 Nature 452, 7187 doi: 10.1038/nature06814 奥行き知覚は、視覚系にとって、そして特に環境に対して動いている観察者にとって、基本的な課題である。脳は、複数の視覚情報を手がかりとして利用し、情景の三次元構造を再現する。有力な視覚手がかりの1つである運動視差は、観察者の移動の際に頻繁に生じるが、それは、異なる距離にある物体のイメージが網膜上を異なる速度で動くためである。ヒトの精神物理学的研究で運動視差が強力な奥行き手がかりになることが実証されており、また両眼視が高度に発達していない動物種では、運動視差が大いに活用されているようである。しかし、この能力の基盤となる神経機構については、ほとんど解明されていない。今回我々は、バーチャル・リアリティー系を用いてアカゲザル(Macaca mulatta)に異なる奥行きに位置する物体を模した運動視差ディスプレイを見せながら移動させ、脳の中側頭野(MT野)の多数のニューロンが、他の奥行き手がかりがなくても運動視差から奥行き情報(近いか遠いか)を発信することを明らかにする。それを行うためには、ニューロンは自身の運動に関する網膜外(非視覚的)シグナルと視覚的な動きとを統合させなければならない。今回の知見は、奥行き知覚の新たな神経基盤を示唆するもので、MT野で視覚手がかりと非視覚手がかりが強固に相互作用していることが証明された。両眼視差に基づく奥行き知覚にMT野がかかわっていることを示すこれまでの研究と総合すると、今回の結果は、MT野に複数の手がかりを利用した、より全般的な三次元空間が表現されていることを示唆している。 Full Text PDF 目次へ戻る