Article 細胞:SATB1は遺伝子発現のリプログラミングを行い、乳がんの増殖と転移を促進する 2008年3月13日 Nature 452, 7184 doi: 10.1038/nature06781 腫瘍の悪性化に伴い遺伝子発現が大きく変化するが、そのメカニズムに関してはほとんどわかっていない。SATB1は多数の遺伝子をSATB1のもとに集合させ、さらにクロマチンリモデリングに関与する酵素を呼び込み、クロマチン構造と遺伝子発現を制御するゲノムオーガナイザーである。本論文では、SATB1が悪性乳がん細胞で発現されていることを示し、SATB1の発現レベルはリンパ節浸潤の有無にかかわらず、患者の予後と密接な関連性(P<0.0001)がある事実が判明した。悪性度の高い培養がん細胞(MDA-MB-231)において、RNA干渉を用いてSATB1をノックダウンさせると1,000を超える遺伝子の発現が変化し、乳腺本来の極性をもった組織形態が回復して腫瘍形成性が失われ、さらにin vivoで腫瘍増殖や転移能が消失した。逆に、悪性度の低い培養がん細胞(SKBR3)にSATB1を強制発現させることで悪性度の高い腫瘍の表現型と一致した遺伝子発現パターンを示すようになり、in vivoで、このがん細胞は新たに転移能を獲得した。SATB1は標的遺伝子座において特異的なエピジェネティック修飾を確立し、そして腫瘍抑制遺伝子の発現を抑制する一方で、転移を促進する遺伝子の発現を増強するという直接的な制御を行っている。SATB1は乳がん細胞のクロマチン構成および転写特性をリプログラムすることで、がん細胞の増殖や転移を促進するということから、これは腫瘍悪性化の新しいメカニズムを提供している。 Full Text PDF 目次へ戻る