Letter

神経:遺伝性痙性対麻痺の原因タンパク質スパスチンによる微小管切断の構造的基盤

Nature 451, 7176 doi: 10.1038/nature06482

遺伝性痙性対麻痺で変異が最も高頻度にみられる遺伝子座がコードするタンパク質スパスチン(spastin)、およびカタニン(katanin)は近縁の微小管切断AAA ATPアーゼであり、神経や中心体非関連の微小管配列の形成および染色体の分離に関与する。スパスチンとカタニンが微小管を破壊し不安定化する機構は知られていないが、その一因はこれらの酵素の構造情報の不足にある。今回我々は、ショウジョウバエのスパスチンAAAドメインのX線結晶構造を報告し、X線小角散乱と原子ドッキング法とを組み合わせて、活性化スパスチン6量体形成のモデルを提案する。スパスチン6量体は中心に目立つ小孔があり、中心から放射状に広がって微小管と結合すると考えられる6本の腕を有する環を形成する。環のどちらの側でも、微小管切断AAA ATPアーゼ特有のヘリックスが小孔の入り口を囲んでおり、高度に保存された3個のループが孔内壁を覆っている。突然変異誘発実験から、これらの構造要素が切断反応に不可欠な役割をもつことが示される。さらにペプチドや抗体による阻害実験で、スパスチンがチューブリンのカルボキシ末端尾部の特異的な性質を認識することにより微小管を解体する可能性が示される。まとめるとこれらの結果は、スパスチンは中心孔を介してチューブリンC末端を引っ張って機械的力を発生させ、この力により微小管格子内でのチューブリン間相互作用を不安定化させるというモデルを裏付けている。我々の研究から、遺伝性痙性対麻痺患者で見つかった変異に起因するスパスチンの構造的欠陥に対する手掛かりも得られる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度