Letter 生態:カリブ海サンゴ礁の臨界閾値と回復力 2007年11月1日 Nature 450, 7166 doi: 10.1038/nature06252 サンゴ礁の世界的な劣化は、地球全体の生物多様性、生態系機能、さらには熱帯域沿岸に生活している数百万人の暮らしを脅かしている。なかでもカリブ海のサンゴ礁は状態悪化が最も深刻なものの1つであり、1983年には植食性のウニであるDiadema antillarumが病気によって大量死し、また、骨組み構造を形成するサンゴ2種も同様の大量死を起こしている。サンゴ礁の状態悪化の特徴は、大型藻類の増加である。重要な問題は、カリブ海サンゴ礁でみられる大型藻類の大発生が容易に元に戻せるものかどうかである。この問題の解答を得るには、大型藻類の優占するサンゴ礁がその生態系のもう1つの安定状態にあたるのか、それとも単に環境もしくは生態の何らかのパラメーターの勾配に沿った相転移の結果であって容易に元に戻せるものなのかを、明らかにしなければならない。今回我々は、完全にパラメーターで表現したシミュレーションモデルに単純な解析モデルを組み合わせて用い、カリブ海のサンゴ礁は、1983年のウニ大量死によって、グレージング(海藻などをむしり食いする摂食様式)をする主要な動物がブダイ類に限られてしまうと、別の安定状態に相転移しやすくなったことを示す。我々は、自然系での劇的なヒステリシス(履歴現象)を明らかにし、それを超えると回復力が失われる、グレージングとサンゴ被度の臨界閾値を明確にする。グレージングのほとんどの閾値は自然界でブダイ類について観察されるグレージングの上限のすぐそばに位置しており、サンゴ礁がブダイ類による搾取作用に極めて影響を受けやすいことが示唆される。生態系の閾値を撹乱の確率論的モデルと組み合わせると、生態系過程を回復させるための標的を特定できる。我々は、この原理を例証するため、現在のサンゴ礁の状態(サンゴの被度とグレージング)と、サンゴ礁が20年にわたって大型藻類優占の安定状態に向かってシフトすることなく、中程度のハリケーンに耐える確率との間の相関関係を推定した。このような標的の特定は、局所スケールで地球規模の撹乱に取り組むという難題に直面しているサンゴ礁管理組織に役立つであろう。 Full Text PDF 目次へ戻る