走査型トンネル顕微鏡(STM)は、鋭いプローブティップと導電性試料の間の局所的な電子トンネリングによって、原子スケールの空間分解能を実現している。STMはその発明から25年間、半導体から超伝導体、原子・分子ナノシステムに至るまで、多様な物理系で多くの現象の発見に役立ってきた。走査型トンネル顕微鏡法の重大な弱点は時間分解能が低いことで、これは、トンネル電流読み出し回路の高周波応答の低下に起因する。今回我々は、トンネル接合が組み込まれたインダクター-キャパシター共振回路からの反射を測定することによってこの弱点を克服し、10 MHz程度という高い電子バンド幅を実証した。最先端技術と比べてバンド幅が約100倍改善されたことから、高速表面トポグラフィー測定や、メゾスコピックな電子工学と力学における精密測定が可能になると考えられる。トンネル接合を横切る広帯域ノイズのこの高周波STMを用いた測定によって、ナノメートルスケールで温度測定が可能になった。さらに我々は、15 fm Hz−1/2に近い感度で高周波の機械的動きを検出した。この感度は光学的や電子的なナノスケール変位検出技術から得られる最も高い感度と同程度であり、この高周波STMで量子限界の位置測定が可能になると予想される。