Letter 神経:大脳皮質と視床下部の脳領域のPYYによる調節からヒトの摂食行動が予測できる 2007年11月1日 Nature 450, 7166 doi: 10.1038/nature06212 適切な栄養摂取を維持する能力は、生存に極めて重要である。哺乳動物の脳では複雑に相互関連した神経回路が発達して、索餌から食餌の終了に至るまで、摂食行動のさまざまな側面を制御している。視床下部と脳幹は、体重の調節にかかわる主要な恒常性維持を司る脳領域と考えられている。しかしながら、現代の「肥満誘発性」のヒト環境では、摂食は、恒常性維持とは無関係な、認知、情動、および報酬といった因子によってほぼ決まっており、こうした因子は主に大脳辺縁系や高次の大脳皮質領域で処理される。食べる喜びは満腹感によって変わり、食物の欠乏は食物の報酬的価値を増大させるが、ヒトの摂食調節に関する恒常性維持と高次中枢間の相互作用に対する適切な神経生物学的説明は、今のところ存在しない。今回我々は、機能的磁気共鳴画像法を用いて、腸由来の生理的な満腹シグナルであるペプチドYY3-36(PYY)が、大脳辺縁系と高次大脳皮質、および恒常性維持に働く脳領域の両者の神経活動を調節することを示す。食物を摂取した状態を模倣した、血漿PYY濃度が高い状態では、尾側外側の眼窩前頭皮質における神経活動の変化から、食事に関連した知覚経験とは独立に摂食行動が予測できる。逆に、PYY濃度が低い状態では、視床下部の活性化から摂食行動が予測できる。つまり、食後の満腹を示す因子の存在により、摂食の制御が恒常性維持領域から快楽に関連する大脳辺縁系領域へと切り替わる。今回の結果は、特定の満腹シグナルに応答して摂食を制御するヒトの神経回路に関する手掛かりを与えるものである。このような恒常性維持と高次脳機能が統合される仕組みの理解が深まることにより、肥満の新たな治療戦略の開発が進むかもしれない。 Full Text PDF 目次へ戻る