Letter 医学:Rasが仲介するエピジェネティックサイレンシングに必要とされる精巧な経路 2007年10月25日 Nature 449, 7165 doi: 10.1038/nature06251 正常細胞の癌細胞への転換はいくつかの段階を経て起こり、一般的には癌遺伝子の活性化と、腫瘍抑制遺伝子およびアポトーシス促進性遺伝子の不活性化を伴っている。多くの場合、発癌に重要な遺伝子の不活性化はエピジェネティックサイレンシングによって起こり、しばしばCpG配列リッチプロモーター領域の過度のメチル化を伴う。サイレンシングが、選択的増殖優越性を与えるエピジェネティック目印の無作為な獲得によって起こるのか、それとも癌遺伝子により開始される特異的経路を介して起こるのかは明らかにされていない。今回我々は、K-rasにより形質転換したNIH3T3細胞でゲノム全領域のRNA干渉(RNAi)スクリーニングを行い、アポトーシス促進性Fas遺伝子のRas介在性エピジェネティックサイレンシングに必要な28個の遺伝子を同定した。これらのRESE(Ras epigenetic silencing effectors)のうち、DNAメチルトランスフェラーゼDNMT1など、少なくとも9個の遺伝子は、K-rasにより形質転換したNIH3T3細胞ではFasプロモーターの特定領域に直接結合するが、形質転換していないNIH3T3細胞では結合しない。28個のRESEのうちどの遺伝子をRNAiによりノックダウンしても、DNMT1のFasプロモーターへの誘導ができなくなり、Fasプロモーターの過度のメチル化が消失し、Fasの発現の抑制解除が起こる。エピジェネティック制御により抑制される他の5個の遺伝子の解析により、Rasが大部分は共通した経路を介して複数の無関連の遺伝子のサイレンシングを引き起こすことが示された。また、9個のRESEがK-rasにより形質転換したNIH3T3細胞の足場非依存性の増殖と腫瘍化に必要であることを示す。これらの9個の遺伝子は、Rasによる形質転換への関連が今まで指摘されていなかった。今回の結果は、Ras介在性エピジェネティックサイレンシングが特異的で複雑な経路を介して起こり、その経路には完全に形質転換した表現型の維持に不可欠な要素が含まれていることを示す。 Full Text PDF 目次へ戻る