Letter

気候:西部太平洋暖水域の水文における最終氷期極大期以降の千年スケールの変化傾向

Nature 449, 7161 doi: 10.1038/nature06164

熱帯太平洋の気候システムは、軌道スケールの気候変化や急激な気候変化の根底にある機構の重要な要素であることが、モデルと古気候データから示唆されている。西部熱帯太平洋上の大気の対流は、温帯への熱と水蒸気の主要な供給源となり、それゆえ、さまざまな強制要素に対する全球気候の応答に影響を及ぼしている可能性がある。しかしながら、全球気候の境界条件における変化、急激な気候変化および放射強制力に対する熱帯太平洋の対流の応答に関しては、まだよくわかっていない。本論文では、西部太平洋暖水域の過去27,000年にわたる水文変化を表す、ボルネオ北部の石筍から得られ絶対年代が特定された3つの酸素同位体記録を示す。今回の結果から、退氷の初期段階で熱帯太平洋と南極の温度が上昇し始めた18,000〜20,000年前に、西部熱帯太平洋上の対流が弱くなったことが考えられる。酸素同位体記録から推測された対流活動は、大西洋の子午面鉛直循環が弱かったハインリッヒ事象1の時期に極小に達し、これは鉛直循環の強さと熱帯太平洋の水文との間にフィードバックがあったことを示唆している。しかし、石筍の記録にはヤンガー・ドライアス事象の証拠がなく、これら2つの急激な退氷気候イベントの期間に働いた機構が異なることが示唆される。完新世の間は、対流活動は春と秋の日射変化を追随していたと思われ、熱帯太平洋の対流は外部放射強制力に対して敏感であるらしい。これらの知見をまとめると、熱帯太平洋の水文循環は両半球高緯度域の気候過程に対してだけでなく、外部放射強制力にも敏感であり、急激な気候変化事象に中心的な役割を果たしていた可能性が立証される。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度