Letter

古生態:後期ネアンデルタール人を気候状況の中に位置づける

Nature 449, 7159 doi: 10.1038/nature06117

旧石器時代の発見物を気候の高精度の枠組み内に位置づける試みは、14C年代法でほぼ21,500年B.P.にあたる年代以前の放射性炭素の年代較正が不確実であることと、グリーンランドのアイスコアや洞窟生成物などの参照用記録から得られた気候事象に関して基準となる暦年代(実年代)表が存在しないことの両方によって複雑化している。今回我々は、対象となる14C年代を、14C時系列を用いてカリアコ海盆の古気候記録に直接マッピングし、暦年代モデルおよび相関の不確実性を回避して、年代測定した事象を最終氷期の1,000年スケールでの気候状況に当てはめるという代替手法について述べる。この方法を、ジブラルタルの「ゴーラムの洞窟」(Gorham's Cave)で見つかった、後期ネアンデルタール人が作製したと推測されるムスティエ式石器群のあった層準から得られた複数の異なるデータ群に適用した。第一は、ムスティエ式の最上部の層準についてのもので、14C法で約32,000年B.P.という数値が広く認められている。第二は、中期旧石器時代の居住が14C法で約28,000年B.P.まで延長される可能性を示すもの、第三は、14C法で約24,000年B.P.のネアンデルタール人残留についてさらなる論争を呼びそうな証拠とされるものである。今回の研究は、これら3つのデータ群が、ネアンデルタール人の絶滅に気候が果たした役割に関する異なるシナリオに解釈されることを示す。第一群と第二群は、最終氷期中期の大半の期間の特徴である、亜氷期と亜間氷期の合間の総体的に気候の不安定な期間に対応していて、ハインリッヒ事象とは同年代でない。これとは対照的に、もし年代が正しいなら、最も若い第三群の年代は、全球氷体積の拡大や緯度方向の温度勾配の増大など大きな環境変化の開始時期まで、後期ネアンデルタール人が生き残っていた可能性を示している。放射性炭素法を用いた我々の気候層序学的手法は、もっと一般的には、さまざまな堆積物内の不連続な記録から切り取った「スナップショット」年代に適用でき、後期更新世のヒト進化の重要な時期に気候がどのような影響を及ぼしていたかを評価する上で、強力な手段となりうる。

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