Letter 生物物理:酵母プリオンの株変異体の構造基盤 2007年9月13日 Nature 449, 7159 doi: 10.1038/nature06108 プリオンの生物学研究からは驚くべきことがたくさんわかったが、その中でも最も予想外だったのは「株」現象である。つまり、単一のタンパク質が誤った折りたたみによって異なる構造の感染力をもつ状態になり、異なる表現型をもたらす。同様に、タンパク質の折りたたみ方がかかわる非感染性疾患においても、タンパク質は幅広いコンホメーションをとりうる。その中には毒性を示すものもあれば耐容性の高いものもある。しかし、プリオン株を作り出す基盤となる構造的な差異と、その差異により生理学的な影響が変わる仕組みについての理解はまだ不足している。今回我々は、溶液NMR、アミドの水素/重水素(H/D)交換、変異誘発を組み合わせて用い、酵母Sup35プリオンのSc4とSc37という2つの株のコンホメーションの構造差異について調べた。2つの株はGln/Asnに富む最初の40アミノ酸の大部分にわたる重なったアミロイドコアをもち、これがH/D交換は非常に受けにくいが、変異を極めて起こしやすいことを見いだした。これらの特徴から、コアは、Sup35由来ペプチドのX線結晶解析により明らかになった「立体ジッパー」に似ていると思われる、密に詰まったβシートからなることが示される。この安定な構造は、Sc37コンホメーションでは大きく広がって最初の70アミノ酸を含んでおり、この株が繊維として高い安定性を示す一方、シャペロンの媒介する複製を受けにくい理由となっている。我々の得た知見により、プリオン株は大規模なコンホメーションの違いをもつことが確証され、プリオン株のコンホメーション変化が生理学的な影響を変える仕組みをはじめとする広範な機能研究の構造基盤が与えられた。 Full Text PDF 目次へ戻る