Letter 地球:始新世の主要な炭酸塩補償深度変化時には北半球氷床は存在しなかった 2007年8月23日 Nature 448, 7156 doi: 10.1038/nature06053 南極で主要な永久氷床が成立したのは、約3,400万年前の始新世と漸新世の境界付近であり、世界中の海洋で炭酸塩補償深度が恒久的に深くなったときと同時である。これまで、北半球氷床の成立はずっと遅く、1,100万年前から500万年前の間に始まったと考えられていた。しかし、始新世において北半球の高緯度域に氷山が存在した証拠が発見されたことと、約4,160万年前に炭酸塩補償深度が一時的に深くなったのと同時期に全球の氷床量の推定値が南極における許容量を超過すると報告されたことから、この説に疑問が投げかけられることとなった。本論文では、両半球において大規模な氷床が約4,160万年前に存在したという仮説を、赤道大西洋の海底堆積物から求めた酸素同位体比と炭素同位体比、および炭酸カルシウム含有量の記録を用いて検証した。この結果、全球氷床量の推定値は最大でも南極のみで十分に収まりうる範囲となり、当時北半球には大規模な氷床が存在しなかったことが示された。また、炭酸塩補償深度が一時的に深くなる少し前に、赤道大西洋では炭酸塩補償深度が浅くなり、海水温が上昇し、炭素同位体比が低下する短期的イベントが存在したことが明らかになった。約4,160万年前に起きたこの一連の環境変化の特徴は、始新世と漸新世の境界でのイベントと始新世前期の気候最良期における「温暖化イベント」との間に、炭素循環という点では共通性があることを示唆している。この発見は、北半球氷床の成立時期に関する地質学的記録と、大陸氷河作用の閾値を超えたのは南半球の方が北半球より早かったとする気候モデルとの間の見かけ上の不一致を解明する上でも役立つだろう。 Full Text PDF 目次へ戻る