Letter 生態:熱帯林の植食性昆虫にみられる低いベータ多様性 2007年8月9日 Nature 448, 7154 doi: 10.1038/nature06021 熱帯林昆虫群集の理解における近年の進展は、昆虫にみられる多様性の大規模パターンを知るためにはほとんど役立っていない。それは、多くの熱帯性昆虫種の分類学的知見が不十分なために、分布記録のマッピング作業がなかなか進まないからである。このことが、全球規模での生物多様性パターンの理解を妨げており、また、保全生物学において熱帯性昆虫への配慮が十分でないことの理由でもある。葉(鱗翅目の幼虫)・樹木の材(鞘翅目のキクイムシ類)・果実(双翅目のショウジョウバエ類)を採食する3つの植食性ギルドに含まれる約500種を調査した我々の研究では、パプアニューギニアの75,000 km2にわたる連続した低地雨林内では、ほとんどの種が広範囲に分布しており、種構成の変化率(ベータ多様性)が低いことがわかった。大きな属内の植物種を採食する鱗翅目幼虫では、ほとんどの種が複数の宿主種をもち、そのため、分布が局所に限られた植物種であっても固有の植食性昆虫種を支えていることはなかった。大きな植物属は、ガやチョウが容易に定着できる数百キロメートルにわたって連続分布する資源となっていた。低いベータ多様性は、異なる宿主特異性をもつ分類群(ショウジョウバエ類とキクイムシ類)でも確認され、このことから、ニューギニアの低地雨林では昆虫種の分布が形作られる上で分散制限があまり関与していないことが示唆される。多くの低地熱帯雨林は一般的に、今回調査したニューギニアのSepik-Ramu地域と類似する大きな熱帯河川流域に広がる低地に位置することから、同様の低いベータ多様性パターンは他の低地熱帯雨林でも生じていると予測される。 Full Text PDF 目次へ戻る