Letter 医学:自己免疫性の脱髄に対するαB-クリスタリンの保護作用と治療効果 2007年7月26日 Nature 448, 7152 doi: 10.1038/nature05935 αB-クリスタリン(CRYAB)は、多発性硬化症の初期の病変部に最も大量にみられる遺伝子転写産物だが、正常な脳組織にはこのような転写産物はみられない。このαB-クリスタリンには、抗アポトーシス作用と神経保護作用がある。多発性硬化症の脳のミエリン鞘に対するCD4+ T細胞による免疫反応では、CRYABが主な標的となっている。今回我々は、この免疫反応の病態生理学的意味を調べた。本論文では、CRYABが免疫系と中枢神経系(CNS)両方で、複数の炎症経路を抑制する強力な負の調節因子として働くことを明らかにする。Cryab−/−マウスでは、野生型の対照マウスに比べ、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)が急性期、進行期とも悪化し、T細胞とマクロファージからのTh1、Th17サイトカイン分泌が多く、CNSの炎症が激しかった。また、Cryab−/−星状膠細胞には、切断されたカスパーゼ-3が多くみられ、TUNEL染色陽性のものが多くなることは、Cryabに抗アポトーシス作用があることを示している。多発性硬化症患者の脳脊髄液とEAEマウスの血清には、抗CRYAB抗体が検出された。組み換えCRYABを投与すると、EAEが改善された。したがって、多発性硬化症では、炎症の負の調節因子であるCRYABに対する免疫応答が炎症と脱髄を悪化させている。発症中の治療として、CRYAB自体の投与で炎症や脱髄の悪化を抑えられる可能性がある。 Full Text PDF 目次へ戻る